このツールでできること
多くの積立シミュレーターは「毎年ちょうど5%で増え続けたら」という前提で計算します。 このツールは、そこにリスク(値動きの振れ幅)を入れて、 結果がどれくらいの範囲に散らばるかを出します。
| 項目 | 一般的なシミュレーター | このツール |
|---|---|---|
| 計算方法 | 確定した利回りで1通り | モンテカルロ法で100通り |
| リスクの指定 | できない | 標準偏差で指定できる |
| 結果の見え方 | 1本の線 | 中央値と上下の幅(ファンチャート) |
| 銘柄 | 1つ | 最大3つを比率で組み合わせ |
| 積立額の変更 | ずっと一定 | 年齢ごとに変更できる |
なぜ「毎年5%で増える」計算は当てにならないのか
期待リターン5%の資産が、毎年きれいに5%ずつ増えることはまずありません。 実際には「+22%、−9%、+15%、−31%……」と動いた結果が、 ならすと5%前後になる、という形になります。
そして平均が同じでも、順番と振れ幅で最終結果は大きく変わります。 特に積立の場合、資産が大きく育った後半に暴落が来るか、 まだ額が小さい前半に来るかで、手元に残る金額はまったく違います。
つまり「30年後にいくらになるか」に単一の正解はなく、 本来は幅で捉えるべきものです。 このツールが1本の線ではなく帯を描くのは、そのためです。
リスク(標準偏差)の読み方
ここでいうリスクは「危険度」ではなく、 リターンが平均からどれくらいばらつくかを表す標準偏差のことです。 リターンが正規分布に従うと仮定すると、おおよそ次のようになります。
- 約68%の年が「平均 ± リスク」の範囲に収まる
- 約95%の年が「平均 ± リスク×2」の範囲に収まる
たとえば期待リターン8%・リスク16%なら、 1年の成績は約68%の確率で−8%〜+24%の間に入り、 約95%の確率で−24%〜+40%の間に入る、という読み方をします。 リスクの数字が大きいほど、この帯は上にも下にも広がります。
主要な資産クラスの目安
入力欄の「参考値から選ぶ」に用意している値です。 過去の実績をもとにした概算で、将来を保証するものではありません。
| 資産 | 期待リターン(年) | リスク(年) | 性格 |
|---|---|---|---|
| オールカントリー | 8% | 16% | 全世界に分散。積立の中心に据えやすい |
| S&P500 | 10% | 18% | 米国大型株。オルカンより上下が大きい |
| TOPIX | 6% | 15% | 国内株。為替の影響を受けない |
| 日経225 | 7% | 20% | 国内株。値がさ株の影響が大きい |
| 新興国株式 | 9% | 25% | 成長期待が高いぶん振れも大きい |
| NASDAQ100 | 13% | 28% | ハイテク偏重。下落局面が深い |
| 半導体株 | 15% | 40% | 景気循環が非常に激しい |
| FANG+ | 16% | 35% | 10銘柄に集中。分散はほぼ効かない |
下のほうにある指数ほど歴史が浅く、 どの期間を切り取るかで数字が大きく変わります。 特にFANG+や半導体株の期待リターンは、 たまたま好調だった時期を含んだ値である点に注意してください。 数字は自由に書き換えられるので、 控えめな値でも試してみることをおすすめします。
モンテカルロ法とは
乱数を使って、起こりうる将来を何通りも作って調べる方法です。 このツールでは、指定した期待リターンとリスクをもとに 毎月のリターンを乱数で生成し、それを積み上げた30年を 100通り作っています。
その100通りを並べ替えて、真ん中(中央値)や 上下の位置にある結果をグラフにしています。 1回ごとの結果は毎回変わるため、実行するたびにグラフは少し動きます。
ボラティリティ・ドラッグ(リスクによる目減り)
「平均リターン」と「実際に手元で増える率」は一致しません。 極端な例で見ると分かりやすくなります。
100万円が1年目に+50%、2年目に−50%だったとします。 平均すると 0%ですが、実際は 100万 → 150万 → 75万 で、25%減っています。
この目減りは振れ幅が大きいほど効いてきます。 そのため本ツールでは、単純に年率を12で割るのではなく、 次の補正を入れています。
月平均リターン = (1 + 年率リターン)^(1/12) - 1 月リスク = 年リスク ÷ √12 実効平均 = 月平均リターン - (月リスク² ÷ 2)
この補正がないと、高リスク資産の結果が実態より大きく出ます。 リスク40%の半導体株などで、有無の差がはっきり現れます。
結果の見方
| 線 | 意味 |
|---|---|
| 中央値 | 100通りを並べたときの真ん中。もっとも「ありがちな」結果 |
| 上位・下位30% | ここに入る可能性が高い、現実的な幅 |
| 上位・下位5% | そこそこ起こりうる、良い場合と悪い場合 |
| 最大・最小 | 100通り中の両端。極端な例なので参考程度に |
| 元本 | 投じた金額の累計。これを下回る線があるかを見る |
見るべきは中央値よりも下位5%の線です。 「うまくいけばいくら」より「悪いほうに転んだとき耐えられるか」のほうが、 積立を続けられるかどうかを決めます。 下位5%が元本を割り込む年数が長いなら、 リスクを取りすぎているか、期間が短すぎるサインです。
入力のコツ
| 項目 | 設定の考え方 |
|---|---|
| 投資年数 | 取り崩しを始める年齢から逆算します。長いほど下振れは収束していきます |
| 現在の年齢 | 積立設定を年齢で切り替えるための基準です |
| 初期投資額 | すでに持っている評価額を入れます。無ければ0で構いません |
| 積立比率 | 銘柄ごとの配分。合計100%にしてください(後述) |
| 積立設定 | 「30才から月5万」のように、年齢と金額の組で登録します。昇給や教育費の見込みを反映できます |
このシミュレーションの前提と限界
結果を正しく受け取るために、何を計算していないかを明記します。 ここを踏まえずに数字だけを見ると、判断を誤ります。
| 前提 | 影響 |
|---|---|
| 銘柄どうしの相関を考えていない | 各銘柄の値動きを独立した乱数で作っています。実際のS&P500とオールカントリーはほぼ同じ方向に動くため、複数銘柄に分けるとリスクが実際より小さく出ます。値動きの似た指数を組み合わせる場合は、1銘柄として扱ったほうが実態に近くなります |
| リターンが正規分布に従うと仮定 | 現実の暴落は正規分布より深く、頻度も高めです。下位5%はやや楽観的と考えてください |
| 試行は100通り | 端(最大・最小)は試行のたびに大きく動きます。中央値付近ほど安定します |
| 税金・手数料・信託報酬を引いていない | 実際の手取りはこれより小さくなります。課税口座なら利益に約20%かかります |
| インフレを考えていない | 表示額は名目値です。物価が上がれば、同じ金額でも買えるものは減ります |
| 積立比率の合計が100%でない場合 | 実際に投じられる額が比率の合計に応じて増減し、元本の線とずれます |
よくある質問
Q. 実行するたびに結果が変わるのはなぜですか?
A. 乱数で100通りの将来を作り直しているためです。
中央値付近はあまり動きませんが、最大値・最小値は毎回大きく変わります。
これは不具合ではなく、「将来は1つに決まらない」ことがそのまま出ている状態です。
Q. 期待リターンとリスクには何を入れればよいですか?
A. 銘柄設定の「参考値から選ぶ」に主要な指数の目安を用意しています。
迷ったら、まずオールカントリー(8%/16%)で試すのが分かりやすいです。
そのうえで、期待リターンを2〜3ポイント下げた控えめな条件でも確認しておくと、
下振れしたときの姿が見えます。
Q. S&P500とオールカントリーを両方入れてもよいですか?
A. 入れられますが、結果は割り引いて見てください。
このツールは銘柄ごとに独立した値動きを生成するため、
実際にはほぼ同じ動きをする2つを分けると、
分散が効いたことになってリスクが小さく出ます。
値動きの似た指数どうしなら、1銘柄にまとめたほうが実態に近くなります。
Q. 途中で積立額を増やす前提で計算できますか?
A. できます。「積立設定を追加」で、
「25才から月3万」「35才から月8万」のように年齢と金額の組を登録してください。
指定した年齢に達した時点で金額が切り替わります。
Q. 新NISAの計算に使えますか?
A. 非課税での運用を前提とした金額として読めます。
本ツールは税金を引いていないため、
非課税口座の範囲内で運用する場合の見え方に近くなります。
課税口座を含む場合は、利益に対する税を別途見込んでください。
制度の枠や条件は変更されることがあるため、
最新の内容は金融庁のNISA特設ページでご確認ください。
Q. 入力した内容は保存されますか?
A. お使いのブラウザに自動保存され、次に開いたときに復元されます。
サーバーに送信されることはありません。
Q. インフレを考えた実質の金額を見たいのですが。
A. 直接の設定はありませんが、
期待リターンから想定インフレ率を引いた値を入れると、
おおよその実質ベースとして読めます。
たとえば期待リターン8%でインフレ2%を見込むなら、6%を入力します。
免責事項
本ツールは複利計算を体験するための計算ツールであり、 特定の金融商品の取得・売却をすすめるものではありません。 参考値として掲載している期待リターン・リスクは過去の実績をもとにした概算であり、 将来の運用成果を示すものでも保証するものでもありません。 表示される金額は税金・手数料・信託報酬・インフレを考慮していない名目値です。 投資の判断はご自身の責任で行ってください。