繰り上げ返済は「確実な運用」だと考える
繰り上げ返済のいちばん分かりやすい捉え方は、 ローン金利と同じ利回りで、確実に増える運用だと考えることです。
金利1%のローンを100万円ぶん繰り上げ返済すると、 本来払うはずだった利息を払わずに済みます。 これは年1%の利益を、値動きの不安なく、税金もかからずに得たのと同じ意味を持ちます。
だから比較の軸はこうなります。
| 繰り上げ返済 | 投資 | |
|---|---|---|
| 利回り | ローン金利と同じ | 期待リターン(不確実) |
| 確実性 | 確実 | 外れることがある |
| 税金 | かからない | 課税口座なら利益に約20% |
| お金の自由度 | 使えなくなる | いつでも売れる |
金利によって答えが変わります
上の「ローン金利が変わるとどうなるか」の表を見てください。 同じ条件でも、金利が違うだけで結論が入れ替わります。
- 金利0.3〜0.5%程度— 変動金利の低い水準。投資が勝つ確率はかなり高くなります
- 金利1%前後— 現在の多くの住宅ローン。それでも投資が有利に出やすい水準です
- 金利2〜3%以上— 繰り上げ返済の効果が大きくなり、投資の優位はかなり縮みます
「繰り上げ返済すべきか」に一般的な答えがないのは、 金利という決定的な条件が人によって違うためです。 まず自分のローン金利を確認してください。
計算に入れていない、重要な3つのこと
このツールは金額の比較しかしていません。 実際の判断では、次の3点が結論を変えることがあります。
1. 住宅ローン控除
住宅ローン控除を受けている期間は、年末のローン残高に応じて税金が戻ってきます。 繰り上げ返済で残高を減らすと、この戻りも減ります。 控除率がローン金利を上回っている場合、 繰り上げ返済することでかえって損をする可能性があります。
控除期間が残っているうちは、繰り上げ返済を待つという判断がよく採られます。 条件は人によって異なるため、ご自身の控除額を確認してください。
2. 団体信用生命保険(団信)
住宅ローンには通常、団信が付いています。 契約者が亡くなった場合などにローンが完済される仕組みです。
つまりローンを抱えていること自体が、生命保険を掛けているのと似た働きをします。 繰り上げ返済で残高を減らすと、この保障額も減ります。
3. 手元の現金が減ること
繰り上げ返済に使ったお金は二度と引き出せません。 失業、病気、教育費など、まとまった支出が必要になったとき、 繰り上げ返済した分は助けになりません。
投資であれば売却して現金化できます。 生活費の半年から1年分の現金を確保したうえで、 残った余裕資金で考えてください。
結果の読み方
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 投資が勝つ確率 | 1000通りのうち、投資にまわしたほうが手元に多く残った割合 |
| 中央値 | ちょうど真ん中の結果 |
| 下位5% | 運が悪かった場合。投資側はここが大きく落ち込みます |
| グラフ | 資産からローン残高を引いた金額(純資産)の推移 |
繰り上げ返済側の金額はほぼぶれません。確実な運用だからです。 一方、投資側は上にも下にも大きく振れます。 この「ぶれ」を受け入れられるかどうかが判断の分かれ目になります。
このシミュレーションの前提と限界
| 前提 | 影響 |
|---|---|
| 住宅ローン控除を考慮していない | 控除期間中は繰り上げ返済の効果が実際より小さくなります |
| 団信の保障価値を考慮していない | 繰り上げ返済の不利な面が反映されていません |
| 金利は期間中ずっと一定 | 変動金利の場合、途中で上がれば繰り上げ返済が有利になります |
| 繰り上げ返済は期間短縮型 | 返済額軽減型を選ぶと結果は変わります |
| 繰り上げ返済の手数料を含まない | 手数料がかかる金融機関では繰り上げ返済がわずかに不利になります |
| リターンが正規分布に従うと仮定 | 現実の暴落はより深く、投資側の下振れは実際にはもっと厳しくなり得ます |
| 表示はすべて名目値 | インフレを考慮していません。インフレ時は借金の実質的な負担が軽くなります |
| ローン金利と期待リターンで月利の出し方が違う | 住宅ローンは実務どおり「年利÷12」、投資は「年利の12乗根」で計算しています。同じ「2%」でもローンのほうがわずかに高く効くため、両者が同率のときは繰り上げ返済がごくわずかに有利に出ます |
よくある質問
Q. 結局どちらを選ぶべきですか?
A. ローン金利が低いほど投資が有利、高いほど繰り上げ返済が有利、というのが計算上の答えです。
ただし住宅ローン控除の期間中であること、団信の保障、手元資金の余裕といった、
金額に表れない要素も判断に含めてください。
数字だけで一方に決まる問題ではありません。
Q. 期間短縮型と返済額軽減型のどちらで計算していますか?
A. 期間短縮型です。同じ金額を繰り上げた場合、利息を減らす効果は期間短縮型のほうが大きくなります。
完済後は、返済に充てていた金額もすべて投資にまわす前提で計算しています。
Q. 投資の税率は何を入れればよいですか?
A. 新NISAなど非課税の口座なら0のままにしてください。
課税口座で運用するなら20.315を入れます。
税率を上げると、投資が勝つ確率は下がります。
Q. 変動金利の場合はどうすればよいですか?
A. 現在の金利で計算したうえで、金利が上がった場合として高めの金利でも試してみてください。
上の比較表で金利ごとの結果が並ぶので、金利上昇に対する強さを確認できます。
Q. 貯めた資産を取り崩す段階も計算したいのですが。
A. 取り崩しシミュレーションをお使いください。
まとまった資金の投資方法を比べたい場合は
一括投資と積立投資の比較が使えます。
免責事項
本ツールは繰り上げ返済と投資の金額を試算するための計算ツールであり、 特定の金融商品の取得・売却や、繰り上げ返済の実行をすすめるものではありません。 入力する期待リターン・リスクは仮定値であり、将来の運用成果を示すものでも保証するものでもありません。 住宅ローン控除、団体信用生命保険、繰り上げ返済手数料は計算に含まれていません。 実際の判断はご自身の契約内容を確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。